奇跡を信じて  NO4 紀子の病室にて

別室に呼ばれた私は、
「先生、妻は大丈夫でしょうか?」と医師に尋ねると、


「奥様は大丈夫ですよ。ただ、お腹の赤ちゃんは、残念ながら…」
と医師は言葉を詰まらせた。


「冗談は、よしてください!」


「正直に申し上げます。残念ですが、奥様は流産されました」と医師は伝えた。


「.............」悔し涙しか出なかった。


私は、妻の病室へ戻った。


紀子が、一時間後に目を覚ますと、
「紀子、大丈夫か?」と私が聞くと、
 
「ええ、私は大丈夫。私のことより、お腹の赤ちゃんを見てもらってほしいの」
と紀子は言った。
「もう見てもらったよ」と私が言うと、
 
「赤ちゃんは、元気だよね?」と紀子が明るく言ったため、
 
「紀子、許してくれ........俺が旅行へ行こうと言ったばかりに.........」
 
「嘘でしょ! 嘘に決まっている..........私の赤ちゃんを返して!」
と紀子は泣き叫んだ。


1ヶ月後に、紀子は退院をしたが、以前のような彼女の明るさに戻るのに長い年月が必要であった。


                                                                                 つづく

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