奇跡を信じて NO14 誠の嫉妬
大地が田村のサインボールを持って、ニヤニヤとしていたため、
「大地君、そのボールどうしたの?」と誠が尋ねた。
「ジャガーズのタムのサインボールだよ」
「いいな、僕もほしいな。ちょっと見せて」
「だめ、僕の宝物だから」と大地は断った。
「ケチ! ママにチクルから」と誠が言ったため、
「チクっていいよ」と大地は、強気で言ったのだ。
(翌日、病室での誠と美代子)
「ママ、僕もサインボールがほしいよ」と誠が言った。
「誰のサインボールがほしいの?」と美代子が尋ねると、
「ジャガーズの選手のボールがほしいの。大地君が持っているんだよ」
「でも、どうして大地君がサインボールを持っているの?」
「知らない........」と誠は、少し涙目で言った。
翌日、美代子がひとみに、
「村山さん、大地君がジャガーズの選手のサインボールをもらったと誠から聞いたのですが、本当ですか?」と尋ねた。
「はい、実は先日、田村選手が来て下さって、大地にサインボールを頂きました」
「そうなのですか? 今度、誠にもサインボールをお願いできないかしら?」
と美代子が聞くと、
「田村選手が、来られたら言えるかもしれませんが、次回いつ来られるのか分からないので、お約束はできないと思うのですが.......」とひとみが言った。
「そうよね、田村選手もお忙しい人ですものね。でも、どうしてこんな所に、わざわざ来るのかしら。何かあると思わない?」と美代子が言ったため、
「私にはちょっと......」とひとみは、言葉を濁した。
美代子は悔しかった。大地にだけサインボールがもらえて、誠にはもらえなかったということが......
そして、その翌日、美代子は偶然、病院のロビーでジャガーズの田村を見かけることになるのだ。その時に美代子が、初めてその場所で、幸二に声をかけたのだ。
つづく