奇跡を信じて NO15 田村からの初めての手紙
六月の中旬に、私(田村)は初めて大地宛に手紙を送った。
大地くんへ
「こんにちは、大地くん。げんきにしていますか。ぼくも、ホームランをうてるように
がんばるので、大地くんもがんばって、びょうきとたたかってね。
こんどの大地くんのたんじょうびに、あえることをたのしみにしています」
タムより
そして、大地の両親へは、
「こんにちは、ご無沙汰しております。大変失礼ですが、手紙を書くのが苦手なもので、簡単に申し上げます。今度の大地君の誕生日(7月4日)に大阪ドームでパイレーツ戦があります。チケットを同封しましたので、もし、大地君の体調がよろしければ、ご家族で応援に来て頂ければ嬉しいです」
田村 博
(村山の自宅にて)
幸雄が21時頃に自宅へ帰ると、ひとみが、
「あなた、ジャガーズの田村さんから手紙が来たの」と言うと、
「ほんとに? 見せて」と幸雄が言い、ハサミで手紙の端を切った。
幸雄は全部読み終えると、その手紙をひとみへ渡した。
ひとみが、その手紙を読み終えるのを待って、
「大地は、きっと喜ぶだろうな」と幸雄が言った。
「でも、大地に外出許可が出るかしら?」とひとみが聞くと、
「明日、俺が阿部先生に相談してみるよ」
「ありがとう。大地の誕生日だから何とかしてあげたいね」
とひとみが言った。
つづく