奇跡を信じて  NO17 大地への嬉しい報告

 二日後、私はナイターが終了してから、22時頃に村山の自宅へ電話を入れた。
「夜分に突然、申し訳ございません。田村博と申します」と言うと、
「ジャガーズの田村さん?自宅の電話番号はどうしてご存知で?」とひとみが聞いたため、
「実は、以前の大地君からの手紙で、ご自宅の電話番号が書かれていたもので....」
「そうだったのですね。大変失礼しました」
「ところで、その後、大地君の具合はいかがですか?」
「おかげさまで、今は安定しています。それから、連絡が遅れましたが、先日、野球のチケットを送って頂き、ありがとうございました」
 とひとみが言った。
「では、今度、ご家族で私の試合を見に来て頂けるのですか?」


ひとみは、医師に言われたことをそのまま話し、その結果、球場へ行くことができないと伝えたのである。
そして、私(田村)が大地へ送った手紙は、球場へ行けない可能性が大きかったため、ひとみは大地には、まだ見せていないということであった。


「先程の件ですが、私が送ったチケットはボックス席で押さえています。つまり、ご家族だけで入っていただける個室タイプになっていますが、だめでしょうか?」と私は尋ねた。
「でも、そのような席は私たちのようなものが、利用できるのでしょうか? 確か、VIPの方しか利用ができないと.........」
とひとみが聞くと、
「確かに仰るとです。大地君は私のVIPですから、問題はないですよ」
「ありがとうございます。まもなくすると、主人が帰ってくると思いますので、すぐに話したいと思います。明日、大地に嬉しい報告ができそうです」
 とひとみは声を詰まらせて泣いた。


                         つづく

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