奇跡を信じて  NO23 約束したプレゼント

「現在、4対1でパイレーツがリードしています。5回裏、2アウト1塁で田村がバッターボックスに入りました。カウントは2‐3となり、ピッチャー野口、投げました。田村、打ちました。打球はライト方向へ飛んでいます。ライトは、完全に諦めました。田村のホームラン、2ランホームランです。4対3、1点差となりました。田村、7試合ぶりのホームラン、第16号です」


「大地、田村選手が、ホームランを打ってくれたね」とひとみが言うと、
「やったー。タムがホームランを打ったよ」と大地は立ち上がって手を叩いた。


その後、7回にパイレーツは1点を入れ、5対3、その差は2点となった。


   (9回裏、ジャガーズの攻撃)
「2点差で、最終回、ジャガーズの攻撃になります。9回裏は、運良く1番バッターの風間からです。そして、9回からはパイレーツの守護神、前田がマウンドへ上がってきました」


「タムは、もう打たないの?」と大地が幸雄に聞いた。
「田村選手は5番目に打つので、今日は廻ってこないかもしれないな」
「もう一回、タムのホームランが見たかったのに......」
  と大地はすねた口調で言ったため、
「大地! 田村選手は、さっきホームランを打ってくれたでしょ。そんな事は言わないの。わかった?」とひとみが言うと、
「ごめんなさい」と大地は謝った。


「風間、セーフティバンドです。打球はサード方向へ、サードが前進、右手で掴んでファーストへ投げました。どちらが早いか? セーフ、セーフです。風間の足が、間一髪速かった。二番の中谷、ここで犠牲バンドでしょうか、川籐さん?」
  
「そうですね、バンドで送って、同点にもっていくでしょうね」
と川籐が言った。


「中谷、やはり犠牲バンドです。ピッチャー2塁をあきらめ1塁へ投げて、1アウト2塁です。 3番の高木がバッターボックスへ入りました。高木、初球を打ちました。打球はレフト方向へ飛んでいます。レフト前に落ちるのか? レフト、前進をして滑り込んでいます。レフトは右手を上げています。神田のファインプレーです。2アウト2塁となりました。 ここで主砲のクルーズです。今日のクルーズはヒットを3本打っています。クルーズに、ホームランが出れば同点となりますが、何とかここで打って欲しいところですね」と江川が言った。


「恐らく敬遠ではないですか?」と川籐が言うと、


「あ、やはり川籐さんが言われた通り、キャッチャーが立ち上がっています。完全にボールを外して、フォアボールにしました。2アウト1塁、2塁で田村の登場です。田村は、第2打席でホームランを打ちましたが、第3、4打席は凡退しています。 ほとんどのファンが田村のヒットを期待していることでしょう。 田村のここ一ヶ月の打率は、4割6分という驚異的な数字です。田村、打席に入りました。 ピッチャー前田、第1球目を投げました。 ストライクです。第2球目は高めのボール球を空振りです。 田村、2ストライクと追い込まれています。前田、第3球目を投げました。内角高めに入り、ボールです。次が勝負球ですね、川籐さん」
  
「は必ず勝負をしてくるでしょうね」と川籐が言った。


「前田、第4球目を投げました。打球はレフト方向へ飛んでいます。レフトの三上、バックしています。ジャンプをしてフェンスぎりぎり、打球を掴んでいるのか? いや、打球はスタンドへ入っています。 ホームラン、サヨナラ3ランホームランです。田村、やってくれました。すごいですね、川籐さん?」


 川籐は声を殺して泣いていたため、声がでなかったのだ。


 「大地、田村選手が二回もホームランを打ってくれたよ」と幸雄が言うと、
 「うん、見てたよ。タムはすごいね」と大地は興奮気味に言った。


  幸雄は、ひとみに、
 「大地の誕生日に、こんな最高のプレゼントをもらって幸せだな」と言った。


                    つづく

×

非ログインユーザーとして返信する