奇跡を信じて  NO32 大地の退院

 翌日、幸雄が私(田村)に何度か連絡をとってくれていたようであったが、取材やテレビ出演等で連絡がとれなかったため、私が大地の自宅へ連絡を入れたのは、夜の10時を過ぎていた。
  
「夜分、失礼します。田村と申します。何度か電話を入れて頂いたのに連絡が遅くなりまして申し訳ございませんでした。 ところで、大地君の様態はいかがですか?」
  
「実は、奇跡的に大地は助かりました」
とひとみが言うと、
  
「ええ! ほんとうに大地君は助かったのですか?」
と信じられない気持ちで、私は確認をしたのだ。
  
「はい、いろいろとご心配をして頂きまして、ありがとうございました」
  
「いえ、でも、ほんとうに良かったですね」
  
「ただ一つ、気になったことがありまして.....」
とひとみは不安そうに言った。
  
「何かあったのですか?」と私は聞くと、
  
「昨日、田村さんが最後にホームランを打った後に、大地の意識が戻ったのですが、その時、大地が夢で田村さんにホームランを打ってくれるように約束をしたと.......」


それを聞いた私は非常に驚き、正直に、
「実は、私も以前に大地君が見た同じ夢を見たのです。その時に、私は確かに大地君と約束をしました。その約束とは、私がホームランを打って、一番になるということです。
約束が守れて良かったです。大地君が退院されたら、また会おうねと伝えて下さい」
  
「そんなことがあったのですか? 田村さんと大地の話が、たまたま偶然な事だったかもしれませんが、田村さんには、大地の約束を守って頂いたことに大変感謝をしています。
大地が退院をしましたら、必ず連絡を致します」
とひとみが言い、私は電話を切った。


  
そして、大地は二週間後に奇跡的に退院することになったのだ。

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