両親へのプレゼント  No5

  「でも、さっき満室だと...」
   と彼女が不安そうに言ったため、


  「先ほど、予約事務所に行って確認をしたら、1件キャンセルをしていないのがあったので、大丈夫です」と私は、咄嗟に彼女に嘘をついた。



  「ありがとうございます。本当なら嬉しいのですが....」と彼女が言うと、


  「どうかされましたか?」と私は聞いた。


  「実は、こちらのホテルがそんなに料金がかかると思っていなかったもので、恥ずかしい話ですが、手持ちのお金が25,000円少々しかないのです。今回は他のホテルも満室のようなので諦めます。次回はお金を貯めてから来ます。今までいろいろと調べて頂き、ありがとうございました」
  と彼女は礼を言い、立ち去ろうとした。


  「お客様、お待ち下さい。確かにパンフレットに提示している料金が3万円からというのは本当です。しかし、今回だけ特別に2名様、25,000円にさせて頂きます。もちろん、税金も含まれていますのでご安心下さい。その日は、あなたのご両親の結婚記念日ですからね」
  と私は上司に相談をせずに即答をしてしまったのだ。


 
  彼女は信じられないような顔をして、


  「ほんとうにありがとうございます」
   と言って、頭を深く下げた。



                         つづく

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