両親へのプレゼント No6
彼女は信じられないような顔をして、
「ほんとうにありがとうございます」
と言って、頭を深く下げた。
その時に初めて、私はまだ彼女の名前、連絡先を聞いていなかったことに気付き、その場で確認をした。
彼女の名前は、小池梨奈(仮名)、高校1年生である。
そして、予約時の名前は父親の小池洋(仮名)と聞き、私はポケットに入れていたメモ帳に名前と彼女の自宅の電話番号を控えた。
私は翌日、宿泊課長(松浜)に報告をしなければならないことが2点あった。
一つ目は、満室の日(8月16日)に予約をとってしまったこと。
二つ目は、誰にも相談をせずに、私が勝手に料金を下げたことである。
その日、私が夜勤で出社してすぐに、昨日の予約の件で松浜課長に全てを打ち明けた。当然、私が勝手に判断したことに対して、強く指導を受けた。
話の最後に、松浜課長から
「そこまでお客様のことを考えているのなら、最後まで責任を持ってやりなさい」
「はい、わかりました。今回の件は、申し訳ございませんでした」
と私が頭を下げ立ち去ろうとした時、課長が私に、
「白鳥の8月16日のシフトは夜勤にしておきなさい。あと、その日は満室だから
頑張ってくれよ」と言ってくれた。
非常に嬉しい言葉であった。
「ありがとうございます」と言い、課長の席を離れた。
つづく