両親へのプレゼント  No7

  8月2日の夜、私が夜勤の時に梨奈からフロントへ連絡が入った。


  私は確認の電話でも入ったのかと思いながら、受話器をとると、


  「こんばんは、小池です。先日はありがとうございました。あと、申し上げにくいのですが、以前せっかく予約を入れていただきましたが、今回はキャンセルをしていただけないでしょうか?」と少し辛い声で梨奈は言った。


  「ご両親に何か急な用事でも、入ったのですか?」と私が聞くと、


  「いえ.....」と言った後、少し沈黙があり、


  「実は、昨日父が再入院してしまって、いつ退院できるのか、わからないのです。以前から身体の具合が悪かったものですから」と梨奈は言った。


  「わかりました。では、今回は残念ですが、キャンセルをしておきますね」お父様に、『お大事になさって下さい』と私は言い、それ以上のことは言及しなかった。


  私は彼女にキャンセルをしてほしいと言われたが、すぐにキャンセルをしなかった。


  理由は、もしキャンセルをしてしまったら、当日は満室のため、万が一、彼女から問い合わせが入った時、100%とれないことは明白であり、もう一つの理由は、私の気持ちの中で、ぜひ彼女の父親が16日までに退院をしてほしいと願っていたからだ。


  ただ、梨奈のあの時の寂しそうな声が、ずっと気にかかっていた。


                          つづく

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